第4話 決めた責任①
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横田建設・再生の道
第4話 決めた責任①
横田建設の再生は、まだ始まったばかりだった。
オンライン面談が終わったあと、九郎はパソコンの画面をしばらく見つめていた。
さっきまで画面に映っていた青年の顔が、頭から離れない。
少したどたどしい日本語。
緊張した表情。
それでも、最後までこちらをまっすぐ見る目。
「……どうするかな」
そう呟きながらも、九郎にはもう答えが見えていた。
技術は、まだ十分とは言えない。
即戦力かと言われれば、そうではない。
それでも――
「一緒にやれるかどうか、だよな……」
面談前は「外国人を雇うかどうか」を考えていた。
しかし、実際に話してみると違った。
目の前にいるのは「外国人」という存在ではない。
これから横田建設で働くかもしれない、一人の人間だった。
九郎は、支援機関に連絡を入れた。
「先ほど面談した方ですが……前向きに進めたいと思います」
送信ボタンを押した。
もう「検討」ではない。
採用するという決断だった。
しばらくして、支援機関から返事が来た。
「ありがとうございます。それでは、採用を前提として進めます」
その言葉を見た瞬間、九郎は小さく息を吐いた。
「……決めた以上、やるしかねぇな」
そこからは、一気に現実的な作業が始まった。
まず送られてきたのは、大量の書類だった。
在留資格認定証明書の申請関係書類。
雇用条件書。
支援計画に関する書類。
会社の登記関係書類。
決算書。
納税関係の証明書。
「……こんなにあるのかよ」
思わず声が漏れる。
一つ一つは難しい書類ではない。
だが、とにかく細かい。
記載内容が合わなければ修正。
日付が違えば修正。
足りない資料があれば追加。
昼は会社の仕事。
夜は外国人受け入れの書類。
分からないところは、支援機関に電話やメールで確認する。
「ここは、この表現でお願いします」
「この日付を統一してください」
「こちらの資料も追加でお願いします」
何度も修正が入った。
「……細けぇな」
そう言いながらも、途中で投げ出す気にはならなかった。
自分で採用を決めたからだ。
ここまで来て、書類の一枚や二枚で止めるわけにはいかない。
そして、書類と同時に考えなければならないことがあった。
住む場所だ。
会社の近くで、候補者が生活できる部屋を探す。
物件をいくつも調べ、問い合わせをする。
しかし、ここでも簡単にはいかなかった。
外国人の入居が可能か。
保証人はどうするのか。
契約条件はどうなっているのか。
「外国人NGって、まだこんなにあるのか……」
ようやく見つけた物件も、家賃だけでは終わらない。
敷金、礼金。
家具や家電。
生活に必要なもの。
計算してみると、当初考えていた以上の費用がかかった。
九郎は苦笑した。
「安い人件費で助かる、なんて話じゃねぇな」
さらに、布団や冷蔵庫、電子レンジなど、最低限の生活用品も必要になる。
外国人を一人受け入れる。
それは、単に仕事を用意するだけではない。
日本で生活を始められるところまで準備することだった。
九郎は、そのことを少しずつ実感し始めていた。